腋窩多汗症について
症状
シャツに汗染みが出来てしまうなど、多量のワキ汗により日常生活に支障をきたす状態を「腋窩多汗症」といいます。発汗に関与するコリン作動性交感神経が興奮しやすいことが要因の1つと考えられていますが、はっきりと分かっていません。明らかな原因が無いまま6か月以上みられ、以下の6症状のうち2項目以上当てはまる場合、「原発性腋窩多汗症」と診断されます。
- 25歳以前に発症した
- 両ワキで、左右同じくらいの多汗がある
- 眠っている間のワキ汗はひどくない
- 週1回以上の多汗を自覚する
- 家族の中に同じようなワキ汗の人がいる
- 多汗により日常生活に支障が生じている
治療
1.塗り薬
エクロック®ゲル
- 2020年11月に発売された、日本初の原発性腋窩多汗症用外用剤(ワキ汗の塗り薬)で、12歳以上が適応となります。
- 抗コリン薬の塗り薬であり、交感神経から出る汗を出す指令をブロックし、発汗を抑える働きを示します。
- 薬の費用は3割負担の方で20gボトル(約2週間使用可能)が1本1500円程度、40gボトル(約1か月使用可能)が1本3000円程度です。詳しくは下記リンクをクリックし参照下さい。
ラピフォート®ワイプ
- 2022年5月に新たに発売された、シートタイプのワキ汗治療薬です。1日1回、通常入浴後にこの製品でワキ汗をふき取ります。1回使い切りの製剤ですので清潔に使用できるのがメリットです。
- 9歳以上の患者さんに保険適応があるので、エクロックゲルが使用できなかった9歳~11歳の子供さんにも使用は可能です。
- こちらも抗コリン薬の塗り薬ですので作用機序はエクロックゲルと同様であり、交感神経から出る汗を出す指令をブロックし、発汗を抑えます。
塩化アルミニウム溶液
- 汗の出口を塞ぎ、汗の量を抑える働きがあります。
- 臭いを抑える効果も期待できます。ただしワキガ(腋臭症)を治すことはできません。
- 保険適応の無い薬剤です。当院では20%溶液と50%溶液を院内製剤として取り扱っております。詳しくは「掌蹠多汗症」の項目をご覧下さい。
2.注射
ボトックス®
エクロックゲルや塩化アルミニウム溶液外用でも改善しない、重症の原発性腋窩多汗症に対する治療法であり、保険適応があります。費用は3割負担の方で両腋窩に注射を行うと、約22000円程度です(その他に診察料がかかります)。
院長は青森県立中央病院勤務時代に多数行ってきた治療ですが、県南地区ではあまり積極的に行っている医療機関が無いようです。塗り薬の治療に比べ格段に効果的な治療法です。デメリットは薬剤費が高いことと注射の痛みでしょうか。ボトックス治療にご興味のある方はスタッフまでお気軽にお問い合わせ下さい。
※腋窩多汗症に対するボトックス治療は15歳以上が適応となります。
※美容皮膚科、美容外科のクリニックでは自由診療としてボトックス治療を行っているところもありますが、当院で行っているボトックス治療は保険がききます。
ボトックス治療の流れ
- まず問診にて、ボトックス治療の適応があるかを確認します。
- 適応があった場合には同意書を用いて説明し、署名をいただきます。
- ボトックス治療を行う予約日、時間を決めます。完全予約制で行っており、施術前の麻酔クリームの処置を希望される場合、第2・第4金曜日の午後14時30分頃からとなります。麻酔クリームでの前処置を希望されない方は、平日午前10:30~12:00の間、もしくは第2・第4金曜日の午後15:30~16:30の間で施術出来ます。なお、土曜日にはボトックス治療は行いません。
- 麻酔クリームでの前処置を行う場合、午後14時15分前には来院頂きます。まずは注射時の疼痛を和らげる目的で両ワキに麻酔クリームを塗布し、40分ほどお待ち頂きます。
- 麻酔クリームを拭き取った後、やはり疼痛緩和目的に両ワキを保冷剤で15分程度冷やしてもらいます。
- 処置室へ入りベッドへ横になって施注の体勢を取ってもらった後、両ワキにマーキングをします。
- ボトックスを片方あたり、15箇所ほど注射します。
- 待合室でしばらく休んでもらい、体調に変化が無いことを医師が確認後、帰宅となります。
※麻酔クリームでの前処置を行わない場合は、あらかじめ渡しておいた麻酔テープを自宅で両脇に貼ってきてもらい、来院後更に両脇を保冷剤で20分程度冷やしてもらいます。この前処置でも十分に施術時の疼痛が緩和されます。
3.内服
1.抗コリン薬(プロ・バンサイン®)、自律神経失調症治療薬など
プロ・バンサイン®
- 日本で唯一、西洋薬の中で「多汗症」に対し保険適用のある飲み薬(抗コリン薬)です。15歳以上が適応となります。
- エクロックゲル・ラピフォートワイプと同様に、交感神経から出る汗を出す指令をブロックし、発汗を抑える働きを示します。
- 比較的即効性があり、効果がある方には服用後1時間ほどで効果が現れ、約5時間効果が継続します。
- 飲み薬なので、一度の服用で全身の汗を抑えることが可能です。よって、腋窩多汗症と掌蹠多汗症がある方や、頭部・顔面の多汗症がある方に適しております。
- 閉塞隅角緑内障の方、前立腺肥大による排尿障害のある方、重い心臓の病気がある方は服用できません。
- 副作用として眼の調節障害、眠気を起こすことがあるので、本剤を服用中の方は、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないこと、とされております。
2.漢方薬
「多汗症」に保険適応がある漢方薬は、「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」があります。
また、「ねあせ」という適応症を持つ漢方薬として、「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」、「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」、「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」があります。
漢方治療に興味がある方、漢方薬も一緒に飲んで治療を受けたい方は診察時、お気軽に申し出て下さい。
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